2015年05月31日

【最終処分地に「敬意や感謝の念を持て」と迫る閣議決定】 【官僚の作文だらけで誠実さに欠ける「最終処分基本方針」改定】



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安倍晋三内閣は05月22日(金)、「特定放射性廃棄物(高レベル放射性廃棄物)の最終処分に関する基本方針の改定」を閣議決定した。改定は2008年以来7年ぶり2回目。

基本方針改定のポイントは5点。
(1)現世代の責任と将来世代の選択可能性
(2)全国的な国民理解、地域理解の醸成
(3)国が前面に立った取り組み
(4)事業に貢献する地域に対する支援
(5)推進体制の改善等

5つのポイントで大きく変わったのは、公募に頼る方式を改めた点。
政府が処分場に適していると考える「科学的有望地」を示した上で、処分場の選定を進めるやり方に転換することにした。
理解活動の状況などを踏まえ、調査などへの理解と協力と関係自治体に申し入れをする。

2000年に定めた「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づいて、経済産業省の認可法人・原子力発電環境整備機構(NUM0=ニューモ、近藤駿介理事長<元原子力委員会委員長>)が、2002年から処分場を受け入れてくれる自治体を公募しているが、名乗り出るところはない。(応募したのは2007年の高知県の東洋町だけで、東洋町では賛否を問う町長選挙を経て町長が交代し、応募を撤回した)



改定された基本方針では、より適性が高いと考えられる地域を「科学的有望地」している。聞きなれない言葉だが、「適地」ほどの意味か。何をもって「科学的」と言っているのか、不明。ちっとも科学的ではない。むしろ「政治的有望地」。

「科学的有望地」の選定方法は経産省の審議会が検討する。
火山の半径15キロ圏内や活断層の付近にある場所については除外される。人口密度や土地利用の状況など、社会的な事情も加味して検討する。
経済産業省によると、「科学的有望地」は日本の国土の7割に当たるとしている。

東洋町のような自治体が今後、出現するとは思えない。
国主導による、財政事情の厳しい過疎地の自治体を狙って、交付金(カネ)を見せつけた「科学的有望地」の強要指名が始まる予感さえする。



地層処分は、高レベル放射性廃棄物を地下300メートルより深くに埋める。最終処分場は、地上1〜2平方キロ、地下6平方キロメートルで、総工費は約3兆円と試算しているという。

高レベル放射性廃棄物は、原発の使用済み核燃料を再処理し、プルトニウムなどを取り出したあとに残った廃液をガラスで固化した物質。
高レベル放射性廃棄物は、万年単位という長い期間にわたって強い放射線を出す。
人が近づくと、十数秒で死にいたる極めて強い放射線が放出されていて、放射能が環境や生物にとって安全なレベルに下がるまで10万年以上かかるとされる。

候補地を複数の地域に選定した後は、20年程度で「文献調査」と「ボーリング(掘削)などによる概要調査」、「地下施設の建設・試験する精密調査」の3段階の調査を経て候補地を絞り込み、最終処分地を決定する。さらに施設建設、高レベル放射性廃棄物搬入、閉鎖と100年規模の事業となる。

最終処分が始まるまでには長い年月がかかるため、経産省は原子力発電所に貯まり続ける使用済み燃料の貯蔵容量を増やす具体策をつくる方針。


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国内の高レベル放射性廃棄物は、青森県・六ケ所村の「六ヶ所高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」にある。フランスや英国で再処理されて返還された高レベル放射性廃棄物だ。なぜ使用済み核燃料を海外に持って行ったかというと、日本ではまだ再処理の技術が確立されていなかったから。そして現在も再処理の技術は確立していない。やはり六ヶ所村にある再処理工場は稼働していない(「試運転中」が長く続いている)。

また、全国の原子力発電所内にあるプールで使用済み核燃料が保管されている。
原発が立地する自治体は、使用済みの核燃料がそのまま地元に置かれることを心配するだろうけれど、負の遺産として各原発でこのまま保管することも考えていいのではないか。もちろん安全性を高めるための技術開発・研究は欠かせないが。

再処理する技術を持たない日本は、わざわざ高レベル放射性廃棄物を増やさなくてもいい。

使用済み核燃料を地中に埋設する「直接処分」という選択もある。
出口をなくした使用済み核燃料の「中間貯蔵」は、東京電力と日本原子力発電が出資する「リサイクル燃料貯蔵株式会社」が乾式貯蔵施設を青森県むつ市に建設して、操業開始に向け原子力規制委員会の審査を受けている。

「再処理リサイクル」は、一度も確立したことがないまま、すでに破綻(はたん)している。



地層処分に話を戻す。
そもそも地層処分方式の技術が確立されているわけでない。

プレートの境界に位置する日本は、地震大国で地殻(地盤)は動いている。「億年単位」で地盤が安定しているヨーロッパやアフリカなど大陸とは違う。
地層処分には、安全性に大きな疑問が残る。放射線漏れの可能性があり、とても危険といえる。
改定した基本方針は、「地層処分が国際認識」とするが、さも地震大国である日本を忘れたかのような認識が間違っている。
根本的な問題を棚上げにしての閣議決定であり、一刻も早い再稼働を念頭に置いた姑息な基本方針の改定といえる。

「ない知恵」を絞った提案もある。
日本学術会議は、2012年08月に高レベル放射性廃棄物の「暫定保管」の提案をしている。地震や火山が活発な日本で、数万年以上に及ぶ長期にわたって安定した地下の地層を確認することは、現在の科学では限界があると、「科学の限界」に言及する。

高レベル放射性廃棄物を数十年から数百年程度、地上や地下に暫定的に保管し、猶予期間を利用して技術の開発や国民的な合意形成を行うべきだと提案している。
解決策を持たない現段階では、先送り策ではあるが傾聴に値する提案といえる。

このまま全国にある約50基ある原発が再稼働されないとしても、すでに日本にある「核のごみ」を地球上から消しさることはできない。
と同時に、再稼働をして使用済み核燃料を増やすことは、愚の骨頂ともいえる判断で、英知を持つわが日本人が選択するような代物ではない。



基本方針改定のポイントは5つあった。
(1)現世代の責任と将来世代の選択可能性
(2)全国的な国民理解、地域理解の醸成
(3)国が前面に立った取り組み
(4)事業に貢献する地域に対する支援
(5)推進体制の改善等

(3)が変わったくらいで、ほかに大きな変化はない。
「国が前面に」も一歩停まって考えないといけない。

審議会(「総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 放射性廃棄物ワーキンググループ」<WG>・増田寛也委員長<元総務大臣・元岩手県知事>)の資料には、登場人物3者のうち、「国」が最後に挙げられていて、最初に挙げられているのは、最終処分事業を行う原子力発電環境整備機構(NUMO=ニューモ)になっている。必ずしも、本丸の国が前面に出ているわけではない。
3者の中間に位置するのが、地域独占の電力会社となる。

審議会の司会を務める資源エネルギー庁放射性廃棄物等対策室の小林大和室長は「通常の企業体と地域の関係と同じような構図」と捉えて、事業主体のニューモを最初にもってきたと釈明している。

(2)の「全国的な国民理解、地域理解の醸成」の関連では、「その実現に貢献する地域に対し、敬意や感謝の念を持つとともに、社会として適切に利益を還元していく必要があるとの認識が、広く国民に共有されることが重要である。」と記している。

「敬意や感謝の念を持つ」ことを求めるのは、まるで戦死した兵士に対する哀悼の念にも近く、日本政府の官僚制が戦時中から連綿と続いている証左のようにも思える。

「事業の各段階における相互理解を深めるための活動や情報公開の徹底等を図る必要がある。」と記述している一方で、都道府県単位で実施される自治体への説明会は<非公開>での開催となることが明らかになっている。
どこが「情報公開の徹底」なのだろうか。

「概要調査地区等の選定においては、関係住民の理解と協力を得ることが極めて重要であり、そのためには、相互理解促進活動や情報公開を徹底し透明性を確保することが必要である。」ともある。
どこが「情報公開を徹底し」「透明性の確保する」なのか。

「情報を受け取る側にとってわかりやすいものとすることに努めるものとする。」
「情報を継続的に共有し、対話を行う場(以下「対話の場」という。)が設けられ、積
極的な活動が行われることが望ましい。」とまであるのだが…。
官僚の「作文」に終始している。

菅義偉官房長官は05月22日の首相官邸で開いた最終処分の関係閣僚会議で「処分地が必要であることからは逃げられない。問題を先送りせず、国民の理解を得ながら一歩ずつ前へ進めていく」と発言している。
「国民の理解を得ながら」の部分は天に誓っての発言なのか。



『佐賀新聞』は、この(2015年)5月に「=欧州と原発=」という興味深い連載を打った。

スウェーデンでの最終処分の先行事例を紹介している。
人口約2万人のエストハンマル自治体は、「核のごみ」(高レベル放射性廃棄物)の受け入れを決めた。
マルガレータ・バレグレン副市長は、決め手は住民の政府や事業者に対する「信頼」だったという。
交付金・補助金という「飴(アメ)」ではない。

信頼をはぐくむには、誠実な態度が求められるのは洋の東西南北を問わないだろう。

非公開―。
情報を隠したまま、水面下で事を進める、カネをばらまけば結局最後は何とかなるサ―という旧来型の手法は、もはや通用しないのではないか。
日本社会は、東日本大震災で原発の過酷事故を経験した。
この大惨事の対応の課程で、政府(中央政府)は国民からの信頼感を大きく失った。

福島(原発被害)や沖縄(在米軍基地)の中央政府への抵抗は、中央政府の理不尽な政策に起因する。
このままでは、また中央政府と戦う地方をいくつか増やすことになるだろう。またゴリ押しをするつもりか。

中央政府には、誠実な対応を求めたい。
国民が持つ「不安と不信」を、「安心と信頼」に替えるようになる施策をしてもらいたい。

◆経済産業省>当該ニュースリリース
http://www.meti.go.jp/press/2015/05/20150522003/20150522003.html
◆経産省>「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」
http://www.meti.go.jp/press/2015/05/20150522003/20150522003-1.pdf
◆佐賀新聞>「=欧州と原発=(1) 最終処分(上) 受け入れ補助金より対話」
http://www.saga-s.co.jp/column/genkai_pluthermal/20202/184350

(了)

posted by びとう さとし at 19:36| 北海道 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 泊・幌延・大間・エネルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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